反逆。



「泣き方なんて知らないでしょう」

もう十分だ、たくさんだ。
何度も同じ茨の道を行くなら、きみのその手は俺が引く


「俺はまだ、きみの背中を見ていたい」


「あの龍は愚かだ。
永遠などという、ありもしないものを約した」

負った傷を癒したところで、痛みを忘れるわけではない。
病を覆い隠したところで、皮膚の内側で膿み腐るばかりだ


「独りでありたいならなにも望むな。さもなくば縋れ。龍か、人か、選ぶのはお前だ」




なぜ、なぜ、何故。何故お前が、お前なんかがそれを着ている。
お前が何をしたというんだ、代わりに何を捨てたというんだ。


   嫉妬、






「……っ、こっちを見ろ、ハルミヤッ!!」

俺の六年、それから、お前の五年だ。
どっちも無にしていいものじゃない

「頼むから、傍にいてやってくれ。置き去りにしないでやってくれよ」


「無駄じゃなかったって言ってくれ――!」

初めて抗った。初めて望んだ。
お前を通して、俺はようやく俺になれる気がしたんだ


「お願いだ、ハルミヤ。お願いだから……生きてくれ」


望め。

望め。


望め――




「あなたは、最初から知っていたのか……?」





「リディ」
可哀想なハルミヤ。そう言って欲しかったんでしょう。
「クロエ」
自分に向けられた好意、心配、尊敬。信じないで生きてきたの?

そして、あれは。



「……、んな、ことが、奇跡だなどと……!」







だから言ったんだ、

無知でいたほうが、幸せだったって


「少年。ねえ少年、救いはどこにあるんだろうね」




太陽のような傲慢さをもたず、かといって月のような静謐も抱けぬまま、頑なにひとりであろうとしている。



あれは星だ。おぞましいほどの孤独の中に、自らを焼きながら生きている。



ハルミヤ。ハルミヤ・ディルカ。――きみの命を、俺にくれ




それでも、ただ、望むらくは。



「エツィラ」

「待ってる。……ずっと待ってる、ハルミヤ」

お前に、あいたい。






龍翼のディオスクロイ

三幕 「永遠」の終着


2014年10月上旬 公開予定




――おかえり、ハルミヤ







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