終わりも、始まりも、人がもたらすものでしょう。
命龍シルヴァスタを神と頂く国、ディルカメネス。
そこでは龍に仕える神子こそが、名実ともに最高権力者の地位に君臨する。
神殿は神子を抱え、神官たちが神を讃える――
かくして創設された王立神学院は、世界最高峰の難関として神童たちの集う場所となった。
たとえ宿命が分かつとも、たとえ運命が逸れるとも。
憶えておきなさい――きみたちは双子なのだよ。
神学院に所属するハルミヤ・ディルカは、片割れのエツィラ・ディルカと共に院長に呼び出される。
告げられたのは当代の神子の死。
そして、次期神子候補として、彼女たちが選ばれた、という神託であった。
選定を待つまでもない。神子になるのは私だ。
狙われた宿房。
刺客の刃を受けながら、ハルミヤは学院を脱出した。
満身創痍で雪原を這いずる彼女は、血染めの法衣に爪を立てる。
――ふざけるな。
何も得ず。何も持たず。何も知らないままで、何故私は死なねばならない?
彼女のもとに降り立つ、一匹の銀龍。
孤独のために命を絶とうとするその龍に、ハルミヤは命の盟約を迫る。
「賭けてみろ、銀の龍」
お前はすごいよ。俺みたいな人間とは違う
あなたが、ずっと、ここにいてくれたらって
そういうの、一番かっこ悪いと思うけどな
たとえば俺が、きみを愛しているとしたら?
繋ぎ合わせては斬り払い、落ちた双星の片割れは地を駆ける。
休む場所が無くとも立ち止まらねばそれでいい。
平穏も、安寧も、幸福もいらない、礼讃と妄信だけが私のすべて。
「奪い返す。そして私は、」
龍翼のディオスクロイ
2014年初春 公開予定
氷雪を這い、徒花を踏み、鏡合わせの自分に刃を向けたなら、龍翼の双対は再び出会うだろう――
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