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――探しているものがある。
掘りあてたいもの、と言い換えてもよかった。




* * *



 外へ出た途端に風が吹き付け、ルカの瞳に砂を放りこんだ。ごしごしと目元をぬぐっても、視界はじわりと染みだした涙に滲む。
 ――泣きたいな、と思う。
 同時に、泣いて解決するようなら万々歳だと笑う自分がいた。


* * *


ユ・タスに住む少女ルカは、成果を上げられない遺跡掘り。
納付金を支払うこともできず、発掘所からの退去を命じられてしまう。

途方に暮れた彼女が出会ったのは、貴人の青年イシュドだった。


* * *


 イシュドは少女の呆然も無視して、荷から文書を掴み上げる。
「権利書だ。このとおり印も捺されている。第三十一発掘所の発掘権は、正式に俺に委譲されたということだな」
「そんな……だって」
「だっても何もない。本来なら数日前から俺のものだった土地に、勝手に住み着いているのはそっちの方だ」


* * *


自分の発掘所が買いあげられようとしている。
すがりつくルカの前に示されたのは、ある提案だった。
遺跡掘りとして、資本家であるイシュドとの雇用契約を結ぶこと――
好待遇を訝しむルカに、彼はひとつの条件を突きつける。

今後一月のあいだに、必ず遺物を掘りだせ、と。


* * *


「提案とは言ったが、お前にこの話を拒む権利はないんだ」

 なよやかな風がやみ、砂粒が地面に落ちていった。晴れ渡り始めたルカの視界の端で、太陽は容赦なく大地を照りつけている。
 白光りする陽光の柱を見上げ、イシュドはそれまでのいつよりも爽やかに笑ってみせた。


「――さあ、働け」


* * *





――探しているものがあった。
会いたい人、と言い換えてもよかった。



「ばかだなあ……」



来る日も、来る日も、土を掘り進めた先。

めくらのもぐらが探していたものは。







2015年4月下旬 小説家になろうにて先行公開予定


「おかえりなさいって、言いたかったんです」



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